初めての酒造り体験 取材報告  (by えつこ)

新潟県長岡市  吉乃川

第 19 話

 それでは、ここでこの「上組蔵」の建物の構造をご紹介しましょう。
 1階は新しく買った瓶や回収によって入ってきたビンを洗浄、点検して2階に送ります。
    
 お酒の瓶は一升瓶を中心に4合ビンや300ml瓶、さらには特殊な形の異形瓶までさまざまです。それらの大部分に対応するために高度な洗瓶機と洗い落としがないように最新鋭の空瓶検査機や人間の目で何重にも点検します。
 まず、この空瓶検査機が通常と違ってとてもすぐれもので、瓶の上からと底から画面に映して確認することが出来るのだそうです。瓶の口の廻りや瓶の底には汚れが残りやすいために徹底的に確認します。
 そして、洗浄水や送風用の高圧空気まで清潔に保つことに気を配っています。機械に取り入れるときと実際に使用する前の2重にろ過したり、フィルターに掛けます。 
つまり水や空気が配管を通っただけで次の場所に行くとまた、ろ過やフィルターに掛けられるのです。
 ですから1階から運び出されるときは完全にクリーンな状態になった瓶がコンベアーに乗って2階に運ばれていきますが2階ではまた、充てん室のクリーンルームに入る前に「グリップリンサ」という機械に入ります。
 このグリップリンサという機械は流れてきた瓶をグリップゴムではさみ、逆さまにしながら、目の非常に細かいフィルターを通してろ過したきれいな水を噴射して最終すすぎをし、水を切り、充てんラインに流します。この機械は小さな瓶にも対応できる優れた機械なのだそうです。
 そして瓶は、ようやくクリーンルームの中に入ってきます。
 ルーム内はフィルターろ過された、きれいな空気が送り込まれていて気圧が高くしてあります。つまり、ここに入ってくる空気は全てフィルターろ過がしてある空気だけ。あとは外に出ていくだけの一方通行になっています。
 こうすることにより外部からの汚れが部屋にはいるのを防いでいるのです。

 このクリーンルームの中にお酒を瓶に詰める「充てん機」が入っています。1時間で6000本の処理能力だそうです。
    
 とにかくこの部屋は別格なのです。
 この部屋に入る前には粘着ロールで服に付いたゴミを取り、次にエアーシャワーで高圧空気を吹き付けられチリを取り、それから専用の作業服に着替えて、ようやく部屋の中に入ることが出来るのだそうです。
 ですから窓も開かず、全て機密性を考えた2重サッシになっています。
 ここで瓶にお酒を充てんして、キャップを締め、封印して、またコンベアーに乗って部屋から出ていき、次の部屋でラベルを貼り、箱に詰める作業が一連のコンベアーの上を流れながら行われます。
    
 次に最上階の5階に行ってみました。一部は、資材置き場になっていてフロアーの一部に黄色いビニールカーテンで囲まれている部分がありました。ここは瓶のフタや封印を置いてある区画です。ここからクリーンルームにそれらを供給しているので、ここもクリーンルームに準じて、フィルターろ過された、きれいで圧力の高い空気が送り込まれています。ここでも廻りから汚れが入りにくい工夫がしてあります。
 とにかく、この「上組蔵」の建物の中は、まず清潔に保つ工夫が随所に見られます。他にも窓は全て網戸が付いていて、その網も普通の網と違っていて、目が細かく、小さな虫も入ってこないようにしてあります。
 万一に虫が入ってきたときは所々に集虫灯が付いていて、その光に惑わされて虫を捕らえるしくみになっています。
 この上組蔵は衛生面での環境整備に力を注ぎ、このクリーンルームだけで2億数千万の巨費を投じて設備の充実を図っています。
 しかし、逆に機械化を進めることによりコストダウンを図り、バランスを保つ工夫をしているのだそうです。

    …第20話につづく…

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