日本のワインのルーツを訊ねて 取材報告  (by えつこ)

山梨県勝沼町  メルシャン勝沼ワイナリー
        マンズ勝沼ワイナリー

第 8 話

 スライドによる説明が終わると今度は実地見学です。ここではワインの他にぶどうを原料としてブランデーも造っています。敷地も広大でどこに何があるのか訳がわからなくなりそうです。でも日登さんはゆっくり歩きながら今年の気候は夏が暑かったためぶどうの生育も例年より早く、その分ワインづくりも早く始まったことなど話しながら製造工程順に施設を回って説明をして下さいました。
 まず最初は収穫したぶどうを除梗器で枝を取り、ぶどうを一粒ずつにほぐします。
   
 ほぐされたぶどうはコンベアーで2階の圧搾機に運ばれます。
   
 白ワイン用ぶどうはここで圧搾機により果汁だけを搾って仕込に使われることになります。
 赤ワインは軽くつぶされて皮や種ごと仕込みます。
   
 これがマンズワイナリーが開発したグラスライニングタンクです。巨大な屋外タンクで、一つの容量は46,000リットル、ビンに換算すると63,000本分が入る大きさで、その構造は、ちょうどホーローの容器みたいなものだそうです。そしてこのタンクは温度調整、つまり低温発酵のために地下水をタンクの頂上からタンクの外側に流すことで温度調整をしているのだそうですが、タンクの外側を水が筋になって流れないように特殊な塗料が塗られていて全体に水が回るような工夫されているのだそうです。
    

 マンズワイナリーで使われているこの発酵タンクは巨大なタンクのために下の方は上の方に比べて圧力がかかり、そのために酵母が出す旨味が違うのだそうです。つまり上の方の楽に発酵している酵母に比べて下の方が水圧が高いために酵母が苦しんで良い旨味を出すのだそうです。それを聞いたとき、主人が「それって日本酒にも言えますね。日本酒、特に吟醸酒などは酵母の生存限界温度ギリギリの低温で発酵させるために、苦しまぎれに出す香りが吟醸香といってすばらしい香りになりますからね。」と話していました。
 材料や酵母の種類が違ってもやはり発酵ということには共通する部分があるものですね。
 なんだかうれしくなってきて、それじゃ、そのタンクの下の方の旨い部分だけのワインを、日本酒のように搾るタイミングで取り分けて「底汲み吟醸ワイン」なんて商品があったら面白いなぁと想像していたら、アレ?いない。置いて行かれそうになってしまいました。ちなみに発酵期間は2〜3週間くらいだそうです。
 さて、次は貯蔵タンクです。
   
 このタンクは先ほどの発酵タンクに比べて、さらに大きく1本の容量がが62,000リットル。内部はガラスコーティングされた巨大なガラス瓶、魔法瓶のような構造になっていて当然、温度調整が出来る構造になっているそうです。この中で長いもので熟成期間は2〜3年にもなるものもあるそうです。
 実はこの場所は左側に先ほどの除梗機や圧搾機などが入っている建物があり、後ろにはぶどうやその他のワインの原料となる果物の集荷倉庫になっています。ちょうど今、小田原農協から柑橘系の果物が入荷して下処理が始まったようで、あたり一面にミカンのようなグレープフルーツのような甘酸っぱい柑橘系のとてもいい匂いが立ちこめてきました。
    …第9話につづく…

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