こだわりの酒蔵見学 取材報告2  (by えつこ)

新潟県弥彦村  弥彦酒造

第 9 話

 お酒を搾ると最初に出てくるのが「あらばしり」と呼ばれ、薄くかすみがかかっているように見えて、味わいは比較的軽く感じるようです。
 また、その後「中取り」と言って澄んだ部分になり、通常はこの部分が最も香りと味わいのバランスが良い部分とされています。
 そして、最後は圧力をかけて押し搾ると「責め」と呼ばれる部分となります。比較的どっしりとした味わいのあるお酒となるようです。
 その様子を確かめてみようと覗き込んだのですが残念ながらよく分かりませんでした。
 今回の大吟醸酒の搾りはまずタンクの中央のコックから袋づり用に取り出し、それ以外は搾る機械でおこなったそうです。
 本当はその様子も見たかったのですがお邪魔になるといけません。ですからその様子を写真にだけは撮っておいてくださいとお願いしておきました。それではこれからその様子をご紹介します。
 まず蔵人が総動員で取りかかっている様子です。皆でステンレス製の容器を取り囲んでタンクから引っ張ってきたホースの先に酒袋を当てて、中にもろみを詰めていきます。
    
 次はその様子を上からのカットでお見せします。大切なお酒ですからこぼさないように容器の中でおこなっているんですね。
    
 酒袋にもろみを入れたらひもでその口を縛ります。
    
 もろみの詰まった酒袋をどんどん空のタンクの中にそっと寝かせるように置いていきます。
    

 するとタンクの最も下に付いている注ぎ口からお酒がほとばしり出てきます。
    
まずこれが「あらばしり」で、一斗瓶で大体2本分程度。続いて「中取り」で2本程度。その後酒袋を積み替えて、上から圧力を少しずつかけていき「責め」を3本と合計7本のお酒を採ることができたのです。
 この7本のお酒は生原酒のまま氷温冷蔵庫の中で熟成するのを待ちます。そして春の新酒鑑評会や秋の鑑評会には、この7本の中からその時の熟成具合を見て、最高のものを出品します。それほど大切な大切なお酒だったのです。
 さすがの私もその状況を知っていて、味見がしたいなどと大それた事は思っていても口にはできません。
 お願いしたいのは山々ですが、そこは大人です。グッとこらえて物欲しそうに見ているだけでした。
 袋づりの説明はこれくらいにして残りの大吟醸酒は搾り機に移されます。
 ここでは槽(ふね)ではなく藪田式圧搾機で搾ります。この機械は鉄のフレームの間に大きな酒袋が並んでいて横からぴったり押しつけます。袋と袋の間の隙間にもろみを注ぎ入れ、袋の方に圧搾空気を送ると袋の方が膨張し隙間のもろみを押しつけ酒粕が残ってお酒だけが搾り出されてきます。
    
 写真は昨日、この機械で搾った大吟醸酒の酒粕を袋から剥ぐところです。
 こんなに大きな圧搾機を使っても槽(ふね)と同じように圧力の加減をして、あえてあまり高い圧力をかけないようにしてもろみの良い部分だけを搾るようにしているのです。
 この蔵は全てのお酒に対して粕歩合というもろみに対して酒粕をどれくらい残したかという数字を知らせてくれます。その粕歩合という数字が大きければもろみを強く搾らずに粕を多く残し、お酒としてはたくさん採らないということになります。

    …第10話につづく…

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