初めての酒蔵見学 取材報告2    【by Etuko】

栃尾市 越銘醸株式会社

第 10 話

 麹造りが終了し、次は麹室の区画の中の4番目、先程の部屋の隣にある涼しい部屋に移りました。
 「出麹」した時の麹は麹菌の急速な生育により40度くらいの高温になっています。そこで隣の涼しい部屋で1日程度休ませて、体調を整えさせるのです。そのことを「枯らし」と呼びます。ここで水分量が3%減少します。
   
 写真に写っているこれが麹台です。ここには1台あたり約15キロの麹が乗っています。最終的な水分調整の職人技として、麹に6本の筋を付けて乗せてあります。この辺は全て手作業で杜氏も説明しながら麹にさわり、常に気にしている様子がわかりました。
   
 それでは失礼してその麹を確かめてみます。
 外硬内軟の蒸し米に麹菌がお米の内部まで入り込んで、よく見ると所々に白い産毛状の麹菌が繁殖してプクプクとした感じに見えます。
 少しだけ口に入れてみましたが、何だかモソッとした感じで、決して柔らかいわけではありませんが、噛んでみるとちょぴり甘みがありました。
 この「枯らし」の部屋を抜けると最初に入ってきた風除け室に戻って来ました。つまりこの風除け室を一度は通らないと他の部屋には行けない作りになっています。
 とりあえず前回見ることが出来なかったこの蔵の心臓部を見ることが出来て満足。満足。
 麹室の外に出てくるとそこは1号蔵の2階でしたね。入口のすぐ脇には先程の自動製麹機の制御板がありました。
      
 これは以前、高野酒造の蔵見学の時にもご説明したように最新式のものです。

 中央のやや上部に5つのダイヤルが一列に横に並んでいます。これで時間経過に伴う温度の設定をします。実際の機械の内部の温度変化は最も下に付いている円形の記録用紙に自動的に曲線的なグラフとして記録されます。
 麹室でその都度、杜氏が説明してくれたことは製造責任者としてあくまで時間の経過に伴った作業の内容を説明してくれたのでした。
 そこで私たちは読者の皆様に時間の経過よりはもっとざっくりと日数的な数字の方が分かり易いと思いまして再度確認させて頂きました。
 すると早速、黒板を持ち出してきて説明を始めて下さいました。
    
 この光景。以前にも同じような場面があったような気がします。
 あっ、思い出しました。4年前に酒造りのことは何もわからない私に当時の浅野専務が同じように、この黒板を出してきて、現在の酒造りで一般的に行われている「三段仕込み」の様子をチョークで書いて教えてくれたのでした。
 杜氏によって同じ場所で同じ黒板を使って、ちょうどそっくり同じようにその場面が再現されたものですから、この蔵の人達はみんな丁寧でまじめな人達なんだなあと感じずにはいられませんでした。
 そんな思い出にひたっている私のことはお構いなしで杜氏の説明は始まりました。
 まず精米して休ませて置いたお米を洗米するところから始まりました。
 1日目、朝に洗米をする。続いて浸漬後、水切りをしてなじませる。
 2日目、洗米してあったお米を蒸す。その後放冷して蒸し米を麹室に運び込む「引き込み」、「種付け」、「床もみ」、夜に「切り返し」。
 3日目、朝に「盛り」、夕方に「仲仕事」、夜中に「仕舞仕事」。
 4日目、午後から「出麹」して「枯らし」
 5日目、仕込みに使う「使用」ということになります。この時の水分量は普通17%、大吟醸で使用される山田錦で14%程度になるそうです。
 とりあえずここまでで5日かかります。どうですか、分かり易いでしょう。
 このようにして出来上がった麹は仕込みに使われることになります。
    …第11話につづく…

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