初めての酒蔵見学 取材報告2    【by Etuko】

栃尾市 越銘醸株式会社

第 6 話

    
 普段、目にすることがなく酒造りの現場で使われている特殊な容器のようですので、これはどのように使うものなのですかと質問させて頂きました。
 杜氏は早速チョークを取り出し、その容器の胴体に漢字で「試桶」と書き、こういう字を書いて「タメ」と呼ぶことを教えてくださいました。
 この試桶(タメ)は酒造りの現場では水やお湯、そしてお米を運ぶときに入れるもので、肩に担いで使うのだそうです。
 私も若い頃はこの仕事をやったのですが慣れないとなかなか難しい。平らなところばかりじゃない、階段やハシゴもこれを担いで上り下りしました。
 すると水がこぼれりゃ真冬ですから非常に冷たい。お湯がこぼれればやけどする。今やれと言われればとても勘弁してくれと言ってしまうほど辛かったことを思い出しますと当時の様子を振り返りながら実際に担いで使い方を見せてくれました。
    
 試桶(タメ)の上に付いているのは「つかみ棒」とでも言いましょうか、正式な名前を聞くのを忘れましたが、タメを渡すときに相手が捕まえやすいように、このにぎりの部分を相手に向けて担ぐのだそうです。
 それではいよいよ「蒸し」の説明に移ります。まず、浸漬したお米は翌日蒸して、仕込みに使える状態にします。言うなれば生のお米から食べられる御飯の形にします。つまりお米の中の生のままでは食べられないβ(ベータ)デンプンを加熱することで食べることの出来るα(アルファ)デンプンに変化させます。このことをα(アルファ)化と言います。それではその作業をする設備をご紹介しましょう。お米を蒸すには蒸気で蒸します。ここでは大きな和釜、そうですね大人が4〜5人入れるお風呂くらいの大きな釜にお湯を沸かします。
    

 そして、その上に甑(こしき)と呼ばれる巨大なセイロを乗せて、その中に浸漬して休ませたお米を平らに敷き詰めます。ちょうど写真に写っている手前が和釜の上部、奥の大きな円筒形の物体が甑(こしき)です。このサイズで一度に約800キロのお米を蒸すことが出来るそうです。
 次に蒸されたばかりのお米は非常に熱いので適度な温度まで放冷機にかけて冷やします。
 これが放冷機の横から見た様子です。まるで斜めに据え付けられたコンベアーのように見えますね。
    
 もう少し近づいてみましょう。放冷機の甑(こしき)に近い部分は蒸し米の投入口になっていて、スコップやタメなどで運ばれてきた蒸し米を投入します。
    
 すると投入口の底の方にある、まるで枝の付いた棒の様に見える回転棒が蒸し米の塊をバラバラに崩して、隣の金属製で網状のコンベアーに平らに広げます。
    
 コンベアーはそれに合わせて、ゆっくりと風を当てながら進みますので、その速度や風の強さ、温度などにより、蒸し米を目的の温度まで下げるという仕組みです。
    
 冷却の終わった蒸し米は投入口の反対側の取り出し口から出てきます。そして、目的の温度まで冷やされた蒸し米はエアーシューターや先程のタメなどを使って次の工程に運ばれていきます。
 それでは実際にお米が蒸されていく様子をご紹介しましょう。

    …第7話につづく…

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