初めての酒蔵見学 取材報告2    【by Etuko】

栃尾市 越銘醸株式会社

第 3 話

 最近は酒米の精米機は非常に高価なため、中小の酒蔵が共同で精米所を作り、そこで行うかまたは農協などに委託して行うのが一般的になってきましたがここでは違いました。
 これまでいくつもの酒蔵を見学してきましたが、自社で精米機を持っていて自家製米をしているのはここだけでしたのでどんな機械なんだろうかと興味津々で歩いていきました。
    
 長い通路の先は真っ暗です。ようやく精米所について明かりをつけてもらうとそれは堂々とそびえていました。
     
 高さが5〜6メートルはあるかと思われる精米機は普通に機械と呼ぶ大きさではなく、いわゆる構造物の様を呈しています。
 機械の上部は小さな体育館を思わせる建物の天井近くまで迫るほどの大きさです。
 とても全体を写すことは出来ませんがその一部を写真に撮りました。
 この精米機は17年前に入れ替えたもので当時の金額で2000万円もしたそうです。
     
 専門的な機械なので毎年のメンテナンスが2〜3日で50万円くらいかかるとのことだそうで、はたして機械を買って自家製米するのと外注するのと、どちらが良いのだろうかとちょっと考え物ですがと正直なところを話してくれました。でも自家製米するメリットはというと、まずこの機械ではお米の長い方の端を削りそれから胴体の方を削るという削り方が出来ると言うことや毎年のお米の出来により削るタイミングや削り具合等の様子を見ながら思うとおりに出来るというメリットなのでしょうかねと話してくださいました。

 酒造りに使う酒米(酒造好適米)は普通の食用米と違って、大粒で中心部のデンプン質、いわゆる心白が大きく、アミノ酸などの旨味成分の少ないお米が良しとされています。
 そういうお米の方が雑味のないきれいなお酒になると言うことなのです。
 ちょうど精米した後のお米がありましたので少し手にとって見せてくれました。
   
 杜氏のしわくちゃな手ですが男らしい年輪が刻まれた、たくましい手の上に透明感のある白いビーズのようなお米が乗っています。これは五百万石という新潟県や北陸、長野を中心にお酒造りに使われている酒造好適米で精米歩合60%のお米です。
 つまり玄米の40%を削り取って中心部分の60%のお米です。
 新潟県の酒蔵は全国的に最もお米を削って酒造りをします。その新潟県の中でもこの越銘醸はさらにもう一段階余計にお米を削って酒造りをします。
 つまり、このクラスのお米は全国的には2段階くらい高級なお酒を造るときに使われるレベルなのです。しかし、ここでは一般に晩酌に飲まれるお酒に使われるお米になるのです。
 まず、この点がこの蔵のすごいところで、同じ新潟県内の酒蔵のレベルより更に精米歩合を上げて酒造りをしている非常にプライドのある蔵なのです。
 さて、精米の話に戻りますが、こちらの精米機でお米を削る場合、精米歩合70%にするには約9時間、60%では15〜16時間、35%にするには3昼夜、72時間もかかるそうです。
 連続して精米をするときは特にお米の温度が上がらないように気を付けると共に、回転数を調整して縦方向や横方向などの削り具合まで注意を払って精米するのだそうです。
 これらの酒造好適米はそのほとんどが地元の契約農家から仕入れ、米造りの段階から目の届く、間違いのないもの、素性のしっかりしたお米を使うのだそうです。ただし品評会に出品する大吟醸酒クラスのお酒はやはり日本一の兵庫県産山田錦という最高のお米を使うのだそうですがその精米歩合は何と38%。つまり酒造りで使う日本最高のお米の62%を削って捨てて、本当の中心部のみで酒造りを行うのだそうです。
     …第4話につづく…

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