初めてのウイスキー蒸留所 報告記  (by えつこ)

山梨県白州町  サントリー白州蒸留所

第 8 話

 ここ白州蒸留所には、大小合わせて約12台のポットスチルがあります。
     
形も、首がふくらんでいる物とまっすぐな形をしている物とがあり、その違いについて案内嬢に聞いてごらんと主人に言われたので質問してみました。
 すると「大きさや首の違いで性格の違うタイプのニューポットになるとだけ。」言われました。「しょうがないな」と主人がその場で補足して教えてくれたことを書きます。
 まず首の形で下の方が膨らんでいるのは「ランタンヘッド」。このタイプから出来るニューポットは軽く爽やかなタイプになる。また、まっすぐなのは「ストレートヘッド」。これは力強いタイプになる。と教えてくれました。
 そしてさらに説明が続きます。
(主人注釈:初留は約6時間。蒸留開始から約2時間でピークになり、山型の曲線を描くように終了する。
また、再留は6〜8時間。本留液の前に出てくるものを前留液。これは蒸留がピークに達するまでに出てくる液体でフーゼル油が多く、石けんや薬品などが混じったようなにおいがして、とても飲めるような物でないということ。本留液はアルコール度数が70度なので飲むのは危険。口の中や喉の粘膜がやけどするので気を付けること。ほんの少しだけ舐めるようにして味わうと若々しく荒々しいウイスキーとしての性質や味が見えるような気がするとのこと。再留も初留と同じように蒸留は山型の曲線を描くように終了するが最後の方が後留液と呼ばれ、好ましくない雑な風味が感じられる。)
 何か学校の先生の講義を聴いているみたいでしょう。後ろで主人がうるさいので一応、言われるままに書きました。これでいいですか?
主人・・・
     勉強になったかね。
ちなみに蛇足ですが焼酎も蒸留酒で、芋などの材料からもろみを作り、蒸留します。最初に出てくる部分はアルコール度数60度くらいで、通称「ハナタレ」と呼ばれ、香りの良い部分。最終的にはアルコール度数10度くらいで蒸留を終了させるのだそうです。

 続いて敷地内をバスで移動し、製樽工場の見学です。ここでは貯蔵用に使った樽の再生作業を見ることができます。ウイスキーの樽は約60〜80年も使いますが、その間に何度か再生作業を施して、長い期間使用し続けるのです。
 新しくつくって初めて貯蔵する新樽は、木香(きが)が強く、熟成も早く、原酒は早い段階で樽出しされます。空いた樽はまた、別のウイスキーを貯蔵するために使われて、使い込むほどに樽は練れて木香が上品になり長期熟成モルトの熟成に用いられることになります。
 しかし、4,5回に及ぶと樽の成分は枯れて、木香がとても穏やかになりその後は後で出てくる後熟やグレーンウイスキーの貯蔵などに使われます。樽の再生作業とは、空樽のフープと呼ばれる金属の輪をはずして鏡板(平らなふた)をはずします。はずした部分に焦げ止めの輪をはめてから樽の中をガスバーナーで焼きます。最初は樽の内部にしみこんだアルコールが燃えるために青白く弱々しい炎で燃え始めます。
 さらに、燃やし続けると今度は樽の内部の木自体が燃え初め、バチバチと音を立てて、オレンジ色から黄色のの炎が燃え上がります。

こうして弱った樽の内側を燃やしてしまって、また本来の木の成分的な力のある部分が内側表面に出てくるようにしてやるのです。
(主人注釈:樽の内側を焦がすのは日本のウイスキーとバーボンウイスキーだけと聞いています。スコッチウイスキーなど主要なウイスキーは樽の内側を焦がしません。焦がすことによってニューポットに早く色がつき、短い期間で長い熟成期間を経たような状態にすることができます。最低3年以上と熟成年数が決まっていたスコッチウイスキーに比べ、早ければ1年程度の熟成で商品として出荷することが出来たのです。)
    …第9話につづく…

第7話にもどる         第9話にすすむ