こだわりの酒蔵見学 取材報告2  (by えつこ)

新潟県弥彦村  弥彦酒造

第 4 話

    
 甑の縁にある足場に乗った2人の蔵人がスコップを持ち、蒸し米をすくってはシューターに乗せます。シューターとはちょうど雪下ろしの時に雪を滑らせて下に落とすための滑り台のような道具です。ここでは蒸し米が雪のように滑って放冷機に移されます。この作業も3年前は桶に蒸し米を入れて人海戦術で運んでいましたが省力化として工夫したところだそうです。さすが雪国の人の発想ですね。
 蒸し米が湯気を立てながらシューターの上をスーッと滑ってきて放冷機の入口に入ります。
    
 最初に掘り出す蒸し米は麹用の五百万石で90kg。放冷機の入口が蒸し米で一杯になりました。
    
 さっそくいつものように少しいただいてみました。
    
 蒸し方は外硬内軟が良しとされています。逆にもし外側が柔らかいと麹菌を繁殖させるときにお米の表面だけで繁殖して良くありません。
 また、内側が硬いと麹菌がお米の内部まで入っていかないためにこれも良くありません。
 外側が硬く、内側が柔らかいという蒸し方は適度にお米の表面と内部に麹菌が繁殖し、その活動が最も活発におこなわれるために良いのだそうです。
 蒸し加減を確認するためにひねり餅を作ります。

 蒸し米を少し手に取り、手のひらで押しひねるようにして餅のように固めます。適度なつぶつぶ感のある塊にくっつく程度がベストです。
    
 この時に蒸し米はまだ熱いのでやけどをしないように気をつけて。
 そして、いただきます。
    
 ゴーとけたたましい音がしてきました。放冷機が動き始めた音です。この機械は中に網目状のベルトがあり、それがゆっくり移動します。その上に平らに広げられた蒸し米がベルトの移動によって先の方に運ばれます。その途中で風をあてて蒸し米を冷やすのですがベルトの速度と風の強さで目的の温度まで下げるのです。
    
 出口の方に移動します。きれいに敷き詰められた蒸し米がゆっくり移動してきました。
    
 今回のお米は普通酒用の蒸し米ですから杜氏が放冷機の出口で麹菌を振りかけます。銀色の茶筒のような容器に麹菌が入っていてお米の上で振っています。一度、放冷機にかけたら作業は止められません。皆さん真剣です。
 大吟醸のような高級酒は専用の飯台に広げて人の手で温度や水分の加減を見ながら慎重に冷やしますが普通酒などは放冷機で冷やしてその場で種付けをします。

    …第5話につづく…

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