最新設備の酒蔵 取材報告  (by えつこ)

新潟県新潟市  高野酒造

第 10 話

 麹米造りは、1日目は「床むろ」というふとんで、2日目は「自動製麹機」というベッドで増殖させ、丸2日間かけて麹菌を増殖させることになる訳です。
 丸2日間麹室で増殖させた麹菌がついたお米を「突き破精(はぜ)麹」と呼び、まだらに麹菌が繁殖した麹米が出来上がります。
 この「突き破精麹」がもっとも良い麹米とされていて、仕込の時に力強く発酵を始めることが出来ます。
 さて、毎度同じような言い方ですみません。ここでも高級酒の場合は違います。吟醸酒以上の高級酒は昔ながらの手間のかかる「麹蓋」を使って人の手で2日間の麹造りをすることになります。それは製麹機のある部屋と反対にありました。
    
 こちらもオール・ステンレス張り。作業台の上にはたくさんの麹蓋が重ねて置いてあります。こちらも残念ながらお米は入っていませんでした。
 でも、だからこそ、こんな格好で気楽に見せてもらうことが出来たのです。
    
 麹蓋とは四角くて底の浅い木製の箱です。このなかに床むろで造った麹米を少量ずつ分けて入れ、麹の増殖と共にお米の位置や盛り方を変えるとともに、重ねている段の組み替えをしながら均一に麹菌を繁殖させるのです。
 大体2時間置きに作業がありますので、その手間と大変さと言ったら想像できません。まして、伝統の技で熟練した蔵人ならではの秘技とでも言いたい芸術的な手つき。
 以前に別の酒蔵で体験醸造に参加して、私だけ実際に麹蓋を使って麹米のまとめ方をやってみたのですが全然ダメでした。その時の蔵人の鮮やかな手つきといったら今もまぶたの奥に焼き付いて忘れられません。
 まるでお米が操られるようにしてその盛り方があっという間に代わるのです。本当にあれはすごかった。

 麹室での作業が終わり、出麹された麹米は1日「枯らし」といって、涼しい部屋で休ませられます。麹室の隣に「枯らし室」があり、その中も入ってみました。
    
 中は涼しく、暑かった麹室から来るととてもいい気持ちです。
 きっと麹菌もいい気持ちでリラックスできるのではないでしょうか。
 ここでは大盛り麹箱と呼ぶ先程の麹蓋より大型の箱の中で麹米が静かに休んでいます。
    
 これは昨日造った「突き破精麹」の麹米です。この枯らし場で20%あった出麹の水分量を15%に調整します。
 どうですか?きれいでしょう。と麹米を少し手にとって見せてくれました。
       
 たしかに、まだらに白い産毛のような麹菌が繁殖している様子がわかります。
 ここで遠慮がちに、少しいただいて味見。少し硬めですが、かみしめるほどに甘味が口の中にじんわり広がります。この甘さ。この甘さと言ったら甘酒。この麹米から甘酒を造ったらきっとおいしいでしょうねと、またもや食べ物の空想にふける私。
 さて、そろそろ出ましょうかと促され、ようやく麹室から出て来ました。
 やはり、実際に麹菌があるところは気を使います。
 蔵見学の時はニオイのする化粧品などはあえてしないように気を使っているつもりですが、やはり私たちは外部の人間です。蔵の最も大切な場所に入る時には、もしかして知らないところで迷惑をかけてはいないか気を使います。
    …第11話につづく…

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