おいしいしょうゆ蔵取材報告 (by えつこ)

長岡市   株式会社 越のむらさき

第 8 話

は味見です。最初に生揚を口に含んでみました。すると香りの時と同様に、うまみが寝ているような、ふくらみが無いような、塩味だけがきわだって、バランスが悪く、とてもおいしいとは言えません。それに比べて本醸造の味は、非常にボリューム感があり、塩甘で味の広がりがあり、とてもまろやかでした。まさに新潟のしょうゆの特徴というのはこのことかと、納得させられる味です。新式醸造は本醸造と比較すると、若干平たく、かたい味で、調味料のような特有のうま味を感じました。
ここまで来ると皆さんもお気づきでしょう。お酒の時と全然違いましたね。
お酒の場合、絞り立ての生酒は香りが良く、原酒のために味も濃厚でした。ところが、おしょうゆの場合には全く違い、搾り立てのおしょうゆは香りも味も薄っぺらな感じで、その後火入れをすることによって、香りが良くなり味に深みがでるのです。なるほど、これが火入れの工程を見たときに言われた「火香(ひが)の重要性」なのですね。う〜ん実感。実感。歴史の知恵といいましょうか日本人にしかわからないこだわりとでも言いましょうか。う〜ん日本人バンザイ。おしょうゆバンザイ。ですね。

こ長岡は平野部にしては毎年たくさんの雪が降るところ。冬にはたくさんの雪が蔵の屋根に降り積り雪下ろしをします。いくつもの蔵が並んでいるこの敷地内では蔵と蔵の間が中庭になっています。おそらくこの中庭は降り積もった屋根の雪を落とすための場所なのでしょう。きっと冬は雪が山のように積まれるこの場所。ただの空き地になっているこの場所に、ぽつんと小さな花壇がありました。外部からは見えないこんな場所にきれいな花が咲いていました。この花壇は案内をしてくださった広井さんが、仕事の合間に手造りしたのだそうです。
何だかホッとする空間に、広井さんの優しさと、すてきな人柄。初めて訊ねた私たちに気さくに答えてくれる蔵の人たち。なんとなくあたたかさを感じさせてくれる会社の人たち。そんな自由で明るい雰囲気を感じました。
おしょうゆ造りの流れは、ひととおり見せていただきました。おしょうゆ造りは初めて知ったこともたくさんありました。いただいた資料とにらめっこしながら広井さんの熱心な説明に解らなかったところもいろいろ質問させていただきました。
   
外に出るとどういう風に蔵の中を回ってきたのか最初の入り口の所に出てきました。この蔵と蔵の間の道が昔の三国街道です。この先は峠を越えて関東に通じています。かつて大勢の旅人が行き交ったこの街道も今では通る人もありません。そこにある時間だけが語りかけてくるような、ふと、そんな気がしました。
     …第8話 完結…

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