初めてのワイン蔵見学 取材報告  (by えつこ)

新潟県上越市   株式会社 岩の原葡萄園

第 8 話

 それではここで、岩の原葡萄園で主に栽培されている川上品種のぶどうをご紹介しましょう。

最も左から順に
  マスカット・ベリーA
  ローズ・シオター
  レッド・ミルレンニューム
  ブラック・クイーン
これらのぶどうが善兵衛から現代にまで引き継がれ、個性と主張のあるワインづくりを続けている最も大切な財産なのです。善兵衛のあの頃の執念が、この岩の原葡萄園の信念となりあくまで自分たちのぶどうで自分たちのワインをつくる。当たり前のように見えてそれが決して普通ではなく独自の道を貫く。なにか、お腹の底にドンと響いてくるような感銘を受けました。
目をまわりに向けると近くに大きな石碑が建っています。
     
これは大正天皇が行啓されたことを記念して建てられた石碑です。
 善兵衛の業績と岩の原葡萄園で作られるワインの優秀さからその時々の偉い方々が大勢訪問されたそうです。
 そこは見晴らしの良い高台。石碑の左を見ると眼下に頸城平野が広がっています。その昔、この辺は岩がゴロゴロしている荒れ地だったそうです。それで「岩の原」という地名になったという説もあるそうです。

 日はすばらしい秋晴れのお天気。頸城平野の向こうには、日本海までも望めます。
   
きっと善兵衛も晴れた日には開墾の手を休め、流れる汗を拭きながらこのすばらしい景色を見つめていたのでしょうね。
 私たちも手すりに身をゆだねながらしばらくの間、時間の流れに思いを馳せていました。
 ふと、時計を見るともうすぐお昼になりそうではありませんか。そうなるとお腹の方が黙ってはいません。善兵衛さんの信念では私のお腹は満たしてはくれません。早々に思いを切り上げて下に降りることにしました。早く下でワインの試飲をしなくちゃいけません。
 乗ってきた車で下におり、ワインショップに向かいました。
    
 ここが見学者にとってメインとなるワインショップです。2階建ての建物の1階がワインとおつまみ、そしてこの地方のおみやげを販売している所です。
 この時期とっておきの、ここでしか飲めないワインがあるのです。それは8月から10月までのワイン仕込時期だけの限定商品「ペルレ」と呼ばれる、言うなれば「赤ちゃんワイン」です。
 通常ワインの発酵は1週間から2週間かかるのですが、発酵から1〜2日目のワインなのです。ワインと言ってもアルコール度数は1〜2度。発酵による炭酸ガスが果汁を泡立たせます。やさしくあやすように静かにグラスに注ぐと、それはまるでぶどうジュースのクリームソーダ(もちろんアイスは乗ってはいないのですが)みたいです。
    …第9話につづく…

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